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ライオンのおやつ 小川糸作 感想

『ライオンのおやつ』感想


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小川糸さんの『ライオンのおやつ』は、静かな瀬戸内海を舞台にした、心に優しく染み入る物語です。この作品は、主人公・雫が余命を宣告され、穏やかな最期を迎えるために「ライオンの家」というホスピスで過ごす日々を描いています。死という重いテーマを扱いながらも、そこには深い温もりと生命の輝きが詰まっています。


「ライオンの家」に集う人々は、それぞれに抱える過去や傷を持ちながらも、静かな日々の中で互いに寄り添い、癒やし合います。登場人物一人ひとりが魅力的で、彼らの抱える物語に触れるたび、自分の人生や大切なものについて考えさせられます。特に、主人公の雫が選ぶ「おやつ」のエピソードは、読者の記憶の中に眠る「思い出の味」を呼び覚まし、その味にまつわる思い出を通じて、人生の美しさや儚さを感じさせてくれます。


文章の端々から漂う静謐な美しさと、瀬戸内の風景描写が作品の魅力をさらに引き立てています。海の音や潮風、夕日の光景が、読んでいる間中、まるで目の前に広がるようでした。また、食べ物や自然に込められた描写は、日常の何気ない幸せを丁寧に掬い上げており、読後には温かな気持ちと共に、日々をもっと丁寧に生きていきたいという思いが湧き上がります。


死を正面から見つめながらも、それを悲劇として描くのではなく、「生きること」として捉えた本作は、読者に癒しと勇気を与えてくれます。涙なしでは読めない感動的な物語ですが、その涙は決して絶望や哀しみだけではなく、命の美しさに気づいた喜びや感謝から流れるものです。


『ライオンのおやつ』は、生きることの意味、日々の些細な幸せ、そして自分自身や他人との向き合い方をそっと教えてくれる一冊です。優しくも力強いこの物語は、読む人の心に確かな灯火をともしてくれることでしょう。

posted by tonmin at 22:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 感動物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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