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ルパンの消息 横山秀夫作 感想書くよ

『ルパンの消息』感想


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横山秀夫さんの『ルパンの消息』は、デビュー作とは思えない完成度の高さと緻密なストーリー展開で、読者を一気に引き込むミステリー作品です。30年前の高校教師の転落死という未解決事件を、時効成立の12時間前に再捜査するというタイムリミット型の構造が、物語に絶妙な緊張感を与えています。


作品の特徴は、過去と現在が巧妙に交錯するストーリーテリングです。当時の高校生だった3人、宮田、明智、石川が30年を経てどのような人生を歩んできたのかが丁寧に描かれる一方で、彼らが事件にどう関与していたのかが徐々に明かされていきます。特に、彼らの関係性や心の葛藤が、物語の核心部分と繋がっていく展開は見事です。青春時代の夢や挫折、そして大人になった今の現実が絡み合い、読者の共感を呼ぶと同時に、物語に奥行きを与えています。


また、横山作品特有の警察内部の描写も見逃せません。時効寸前の捜査に挑む刑事たちの緊迫感と、それぞれが抱える事情がリアルに描かれており、物語に厚みを加えています。特に、刑事たちが単なる正義の執行者ではなく、人間らしい弱さや葛藤を抱えている点が印象的です。その中で、真相に迫る過程が丹念に描かれており、ラストまで読者を飽きさせることがありません。


物語の鍵となる「ルパン」という名前の象徴性も巧妙です。アルセーヌ・ルパンのように「義賊」のイメージを漂わせながら、実際には誰がルパンであり、どのような意図がそこにあったのかが明かされるにつれ、物語の全貌が一気に立ち上がります。読者が持つ先入観や予想を覆す展開は、横山秀夫らしい驚きと爽快感を与えてくれます。


デビュー作ながら、青春小説としての切なさ、警察小説としての緊迫感、そしてミステリーとしての知的興奮が見事に融合している点がこの作品の魅力です。12時間という時間制限の中で展開される物語は、読む手を止めさせない疾走感に溢れ、ラストに辿り着いたときには爽快感と同時にどこか切ない余韻を残します。


『ルパンの消息』は、横山秀夫の作家としての才能が随所に光る一冊であり、デビュー作という枠を超えてミステリー小説の傑作といえるでしょう。

posted by tonmin at 12:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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